鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「悪い悪い。俺がいちいち説教くさいのは、わかってるんだが……この前も言ったけど、職業病だ。言うことの聞かないひよこ共を統率するのは、骨が折れる。何も言わなくても済むような連中だけなら、良いんだけどなー。集団になると、それぞれの役割もある。なかなか、そうもいかない」

 温かなお茶を飲みつつ、キースは苦笑した。彼だって自分がしていることが、わかりやすく人に好かれる訳ではないことを理解している。

「あのっ……」

「ん? なんだ?」

 急に意を決したようなオデットに、キースは少し驚いた表情になった。

「私っ……キース様は、凄いと思います。誰かに嫌われるのを覚悟で、言わなければいけない事を言って怒ったりなんて私には出来ないと思います。セドリックから、そう聞いて……」

「……はは。あー……あいつ。君に良くわからない慰めをしたみたいだな。そう言ってくれてありがとう。だが別に誰かに感謝されることを、望んでいる訳でもない。ある程度の役職にある俺には、そうすることも仕事の内だからな」

「竜に……セドリックに、凄く好かれてて……素敵だと思いました」

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