鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「鉄巨人……? そうか。あれはこの前の戦争でも、見なかったな。雷が効いたようだったが、俺のセドリックのような雷竜は希少でね。もし、敵対して争うことになれば、かなり厄介な敵になるだろう」

 まだ見ぬ未来の戦いを想像するようにした彼は、眉を顰めつつそう言った。

 彼の国ヴェリエフェンディとオデットの生まれ育った魔法大国ガヴェアは、この前に終戦したばかりだ。

 領土を広げようと企んでいるガヴェアが周辺諸国に手を出すのは歴史的に言えば良くあることで、驚くことでもなかった。武力を持って小国を併合したりと成功することもあるが、竜に守られたヴェリエフェンディに対しては手痛い敗戦を喫するのが常だった。

「……最近、開発された術だそうです。私は、いつも追い掛けられているだけですけど」

「いつも?」

 目を見開き驚いた表情になった彼は、その言葉に引っ掛かったようだった。

 あんな凶悪な見た目の鉄巨人に追いかけられることを、いつもの事だと動じることもないオデットに対して信じられない思いを抱いたに違いない。

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