鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
そう言って、周囲を見渡したキースはいきなり素早い動きで走り出した。彼の意図がわからないままに、その場に残されたオデットは良くわからない状況に対処出来ず思わず身体が固まった。
馬のいななく鋭い鳴き声と共に大きな音がして、周囲には砂煙が立った。気がつけば、道に転がったキースが荒っぽい走りをしていた馬車から轢かれそうになっていた子どもを抱きかかえている。
(わ……良かった……良かった)
オデットは両手で口を押さえて、大きくため息を漏らした。
それは、たった数秒の出来事だった。キースに抱かれた子どもは、母親らしき女性に引き渡されてオデットが安心して肩を落としたその時だった。
「っ……やっ……いやっ……」
真っ黒な魔法使いのローブに身を包んだ男に肩に担ぎ上げられて、オデットは背中がゾクっとするような寒気が走った。これを着ているのは、ガヴェアの魔法使いに間違いない。
(嘘……なんで、ここは敵国のヴェリエフェンディで……守護竜様の、強い結界だって張られているというのに……この人たちは入ってこれないはずなのに?)
馬のいななく鋭い鳴き声と共に大きな音がして、周囲には砂煙が立った。気がつけば、道に転がったキースが荒っぽい走りをしていた馬車から轢かれそうになっていた子どもを抱きかかえている。
(わ……良かった……良かった)
オデットは両手で口を押さえて、大きくため息を漏らした。
それは、たった数秒の出来事だった。キースに抱かれた子どもは、母親らしき女性に引き渡されてオデットが安心して肩を落としたその時だった。
「っ……やっ……いやっ……」
真っ黒な魔法使いのローブに身を包んだ男に肩に担ぎ上げられて、オデットは背中がゾクっとするような寒気が走った。これを着ているのは、ガヴェアの魔法使いに間違いない。
(嘘……なんで、ここは敵国のヴェリエフェンディで……守護竜様の、強い結界だって張られているというのに……この人たちは入ってこれないはずなのに?)