鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

12 キス

 不安定な体勢のオデットを落とさないようにと、慎重に緩やかな角度で降下をしたセドリックに乗って家まで帰ってきた。

 オデットが暗い視界の中ですぐに目にしたのは、扉を開いたままになっている家の前で完全に据わった目になっていたキースだった。

 怒りで周囲の空気がビリビリとしているように感じられる彼を見て、そういう訳にはいかないと言うのは重々わかりつつもオデットは逃げたくなった。

「……もう、言い訳は良い。お前は今日は、竜舎に帰っていろ」

 着地したセドリックから慌てて降りようとするオデットを助けながら、我慢出来ない様子でキースは厳しい顔をして言った。きつい言葉を向けられているのはこの自分ではないというのに、オデットは胸が痛くなった。

「あのっ……ごめんなさい。私が、セドリックに頼んだんです。彼は、言う通りにしてくれただけで……全然悪くないです」

 自分たちが飛んで帰って来ることになった訳を、慌てて話そうとしたオデットの言葉を彼は珍しく遮り、手を引きながら言った。

< 91 / 272 >

この作品をシェア

pagetop