だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
第六章 傷跡に触れて気づく想いは秘密に
 翌週の土曜日、寒さは一段と厳しくなり今にも雪が降りだしそうな曇天が空を覆っている。

 朝から美容室に足を運び、いつもは下ろしている髪は少しだけ巻いてハーフアップにしてもらった。メイクもお願いし、用意していたドレスとアクセサリーを身につけ、いつもとはまったく違う装いに我ながら緊張していた。

 参列する結婚式でもここまで気合いを入れた覚えはない。

 パーティーは夕方からなので、久弥さんの運転する車で会場に向かう。

 久弥さんは光沢のある黒のスリーピーススーツを着用し、蝶ネクタイとポケットチーフでパーティー用の装いだ。髪もしっかりワックスで整えていて、端正な顔立ちによく似合っている。私とは違って違和感なく着こなしているのはさすがだ。

 チラチラと隣をうかがいながら軽くため息をつく。

 会場もそう遠くはないし日帰りだと構えていたら、久志さんが会場となるホテルの客室を押さえてくれていると聞かされ、少しだけ動揺した。当然私たちは同じ部屋だ。

 会場でお酒を飲むこととか、終わったあとの疲労を考えたら宿泊した方がいい。久志さんなりの気遣いなのだろう。

 久弥さんとは一緒のベッドで寝て、スキンシップもそれなりにあるのだから、今さら戸惑ってどうするの。

 でもこれが愛し合って結婚した夫婦なら、なんの問題も心の揺れもないのに。

「大丈夫か?」

「え?」

 不意に隣から声がかかり、頭を動かす。
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