だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「すみません。あの、緊張しちゃって」

 ここは正直に答える。

 パーティーだけではなく、久弥さんと泊まることも含めているとは言えないけれど。

「そんなに心配しなくてもいい。あくまでもメインは久志や伯父だ」

 久弥さんのフォローに頷く。彼に余計な心配をかけさせるわけにはいかない。久弥さんの妻なら、こういうのに慣れている女性がいいんだろうな。

 気持ちが沈みそうになったが、そのとき彼が私の髪先にさりげなく触れ、意識はそちらに持っていかれた。

「よく似合っている。こんな可愛い瑠衣を見られただけで、出席すると返事した甲斐があるよ」

 信号が変わり再び彼は前を向いた。途端に早鐘を打ちだす心臓を押さえ、平常心を取り戻そうと躍起になる。

 これってわざと? 狙って言っているの?

 どっちみちさらりと受け止められる器量は私にはない。私の恋愛経験なんてたがが知れている。久弥さんと比べたら雲泥の差なのはあきらかだ。

 そこで自分を叱責して、パーティーだけに集中しようと気持ちを切り替える。

 左手の薬指で輝く結婚指輪は、やはりわずかに緩い。すり抜けて落ちるほどではないが、どこか心許ない感じがして、私たちの関係を表しているような気がした。
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