だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「あそこまでするのは、大変だったろ」

 労われているのか、呆れられているのか。

「いえいえ。毎日でもないですし、イベントごとは楽しみたいタイプなので」

 母は仕事が忙しくて大変だったが、誕生日やクリスマス、ひな祭りや子どもの日など行事を大事にしてくれた。特別感があって子ども心にワクワクした。

 ひとりならきっと面倒だと思うけれど、こうして共有できる相手が今はいる。結果的に勝手に押しつけている形になっているけれど。

「なら、瑠衣の作ったカレーはまた食べたい」

「はい、喜んで」

 久弥さんから素直にリクエストされて頷く。続けて、主要な人たちには挨拶できたから、パーティーは早めに切り上げてもかまわないと伝えられる。正直、ありがたい。

「久弥」

 そのとき女性の声がして、私と久弥さんの意識はそちらに向いた。相手を確認し、目を見張る。

 目鼻立ちがはっきりとした美人には、見覚えがあった。母の手術の帰りに久弥さんと歩いていた地女性だ。

 あのときはスーツだったが、今は赤いマーメイドドレスを身にまとい、彼女の綺麗な体のラインが強調されている。大人の魅力にあふれていて、女性の私でも目を奪われた。

「よかった、会えて。探していたのよ。奥さまですか?」

 突然彼女の視線がこちらに向き、背筋を正す。赤い口紅に彩られた唇が弧を描いた。

「初めまして、鎌田(かまだ)寧々(ねね)です。ご主人には仕事でいつもお世話になっております」

「初めまして、瑠衣と申します」

 こちらも名乗ると、鎌田さんは微笑んだまま私を見つめてくる。
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