だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 強引なのに乱暴さはなく、私の中で戸惑いが湧き起こりながらも不快感はなかった。むしろ焦らされるようなもどかしさを覚え、苦しくなる。

 指先や手のひらでガウンの上から胸を刺激され、甘いキスに酔って体が熱を帯びてくる。

「はぁ……んっ……」

 やっと解放され、大きく息を吸い込んだ。けれどすぐに唇を引き結ぶ。そうしないと声が漏れそうだったから。

「瑠衣」

 耳元で艶っぽく名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がる。耳たぶを甘噛みされて音を立てて口づけられた。

「や、いや」

 反対側の久弥さんの手が、剥き出しになっている私の首筋から肩をゆっくり撫でていく。直接肌に触れられ、電流が走ったようだった。

「嫌なら、ちゃんと抵抗してほしい」

 余裕なさそうに囁かれ、ふと我に返る。

 ああ、そっか。抵抗しないと。私たちは本物の夫婦じゃないから。これ以上の触れ合いは必要ないはず。

 もしかして私、久弥さんに試されているのかな?

 回らない頭で自分なりの正しい回答を見つけようとする。けれど久弥さんと視線が交わり、その瞬間に視界が一気に滲む。

「抵抗、しなきゃ……だめ、ですか?」

 考えるよりも先に震える声が口をついて出た。久弥さんは目を見張り、すぐに発言を後悔する。

「あの」

 言い訳しようとしたら力強く抱きしめられ、苦しさに呼吸を止めた。久弥さんは、どう受け止めたんだろう。

「ずるい聞き方をした」

 当惑していたら、久弥さんがぽつりと呟いた。続けて私を抱きしめていた腕の力を緩めると、彼は私の頬に手を添え、まっすぐに見据えた。
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