だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 まともに久弥さんの顔が見られずうつむき気味になる。一方で、彼からの刺さるような視線を受け、肩を縮めた。妙な間があり、なにも言わない彼に不安を覚えておそるおそる顔を上げる。すると目が合ったや否や強く抱きしめられた。

「瑠衣があまりにも綺麗だから見惚れていた」

 耳元で囁かれた言葉に目を見張る。続けて彼の大きな手のひらが肌を撫でだした。

「やっ」

 さっきまでガウン越しだったのに、久弥さんの手の感触や温もりを直接肌に感じる。乾いた手のひらと骨張った指が肌を滑り、息を呑んだ。思わず声が漏れそうになるのを、歯を食い縛って必死に抑える。

「声、我慢しなくていい」

「でも」

 私の行動なんて久弥さんにはお見通しだ。否定しようとしたら、彼の手が胸のふくらみに触れ、目を剥いた。

「あっ」

「なら、そんな余裕なくそうか」

 不敵に吐息混じりに耳元で囁かれ、肩が震える。そのまま耳たぶに唇を寄せながら、彼の手は遠慮なく肌へ刺激を与えていく。

「はっ……ん……」

 視界が滲んで、なにもかも初めての経験に恥ずかしくて逃げ出したくなる。でも、もっとしてほしいと思う自分もいた。

「久……弥、さん」

 助けを求めるように名前を呼ぶと、唇を塞がれた。貪(むさぼ)るような口づけが思考力が鈍らせていく。

「瑠衣は俺のことだけ考えていたらいいんだ」

 キスの合間に低く告げられるが、なにも返せない。もうとっくにそうなっている。久弥さんの熱に浮かされ、身も心もすべて彼に委ねた。
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