だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「でも瑠衣は、自分の境遇を全部受け止めて、悲観ぶったり卑屈になったりせず前を向いて未来を描いて……そんな瑠衣に何度も救われた」

 久弥さんの硬かった表情がそこでわずかに和らいだ。

「瑠衣と出会って瑠衣が隣にいて、大事にしたいと思った。手放したくない。失う怖さよりも、失わないためになんでもする覚悟を初めて持てたんだ。なにがあっても瑠衣を守っていく。だから、ずっとそばにいてくれないか?」

 真剣な眼差しが私を捉えて逃げられない。自分の気持ちを伝えたいのに、声よりも先に熱いものが込み上げてきて視界が滲んだ。

 ぐっと目の奥に力を入れて泣くのを我慢していると、久弥さんに強く抱きしめられる。

「結婚したからじゃない。瑠衣だからこんなにも惹かれて、誰にも渡したくないんだ」

 続けて久弥さんは腕の力を緩め、私の目をしっかり見つめてきた。

「もっと早く伝えるべきだった。瑠衣を愛している。……瑠衣は俺をどう思っているんだ?」

 かすかに不安の混じった声に応えたくて、ぐっと息を呑んだ。

「私、も。私も久弥さんが好きです。ありのままの私を受け止めて、それでもいいんだって前を向かせてくれる」

 町原くんに告げた久弥さんの言葉で改めて思った。久弥さんはいつも私に寄り添ってくれる。つらくて傷つきそうになったとき、彼は何度も私を守ってくれた。

 久弥さんがそばにいて、私の方こそどれほど救われたか。
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