だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「伯父を見返したい気持ちもなかったと言えば嘘になる。いつかうしろ盾を作ってTOGAコーポレーションの代表に名乗り出たらどうなるだろうかって。でも、そんな上辺だけのものが欲しかったんじゃないって気づいたんだ……瑠衣に出会って」

 私の名前が告げられ、つい久弥さんを二度見する。

「瑠衣にプロポーズしたのは、祖母の反応や衝動的なものもあった。でも契約だとしても自分から結婚を持ちかけたのは瑠衣が初めてだったんだ。鎌田との結婚はあんなに二の足を踏んでいたのに……。それから瑠衣と過ごすうちに、自分の中の黒い感情が馬鹿らしくなって、いつの間にか瑠衣を大事にすることばかり考えていた」

 久弥さんはおかしそうに笑って話すが、逆に私は泣きそうになる。

「久弥さんは、本当にTOGAコーポレーションを継がなくてもいいんですか?」

 緊張で口の中が乾いていくのを感じながら、さらに踏み込んで尋ねてみる。

 久弥さんの想いは嬉しいが、少しでもその気持ちが彼にあるのなら、無視していい問題じゃない。

「子どもの頃は、多少なりとも祖父の後を継ぎたい、継ぐんだと思った。けれど、本気でTOGAコーポレーションを継ぎたかったら、それなりに後継者として立ち振る舞って根回ししたし、伯父とも向き合っていた。なにより自分で会社を起ち上げていないさ。今の仕事は忙しいが業績も順調で気に入っているんだ」

 そう話す久弥さんの顔に嘘はない。
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