だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
『これでもね、人を見る目はあるの。瑠衣さんとこうして何度もお話しして、あなたがそんな邪な考えを持つ人じゃないってわかっているわ。なによりあなたは久弥が選んだ女性ですもの』

 光子さんの言葉に胸が痛くなり、抑え込む暇さえなく目尻から涙があふれた。

『瑠衣さん?』

『ごめ、ん……なさい』

 両手で顔を押さえる私に、心配そうな光子さんの声がかかる。私を信じてくれた光子さんにこれ以上、嘘を重ねるのがつらくて申し訳なかった。

 久弥さんとの契約もある。けれど光子さんに対して、いつまで偽りの関係を続けるのか。

 意を決し、私は久弥さんとの結婚の経緯を話しだした。

『ごめんなさい』

 一通り説明して、深々と頭を下げる。

 私を信じて庇ってくれた光子さんを、裏切っていた。傷つけて、今度こそ彼女に罵られてもなにも言えない。

 心臓がバクバクと音を立て、光子さんの反応に冷や汗が止まらない。でもすべて自業自得だ。

『……謝らないで。全部、わかっていたから』

『え?』

 反射的に顔を上げると、光子さんは困惑気味に微笑んだ。

『昔から久弥はね、どこか冷めているというか、なにかを夢中で欲しがったりする子じゃなかったの。自分で会社を起ち上げるって告げてきたときも、どうしても希望していたわけじゃなく、久光に気を使ってのことなのもわかっていた。あれこれ口を出したけれど聞く耳持たずでね。結婚に関してもそう。そのうち私が気に入る相手を連れてくる、なんて言って。まったく誰のために結婚するつもりなのか』

 呆れた口調でそう話す光子さんは、少しだけ寂しそうだった。
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