だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
『瑠衣さんは……久弥をどう思っているの?』

 光子さんの質問に、自分の手をぎゅっと握る。ここで彼女に久弥さんへの想いを告げてもいいのか。久弥さんは、私と別れたら鎌田さんを……別の女性を光子さんに紹介するつもりかもしれないのに。

『私は……』

 続きが言えずに、部屋に沈黙が降りてくる。ややあって、光子さんから『瑠衣さん』と呼びかけられた。

『久弥とは別れなさい』

 きっぱりとした物言いに心の中がざわめく。

 おそるおそる光子さんをうかがうと、彼女はまっすぐに私を見つめてきた。

『別れを切り出して、それで終わるようなら、お互いのためにも離れるべきよ。でも……あなたとの関係を、久弥がどうしたいのか、もしもきちんと向き合ったら……もう一度考えてやってくれないかしら? お願い』

 最後は頭を下げられ、逆に慌てる。久弥さんとの関係にけじめをつけるときがやってきたのだと、私の中で覚悟を決められた。

 その後久弥さんに別れを告げ、この契約結婚を終わらせようとしたのに、彼が私を追いかけきてくれて、きちんとふたりで向き合えた。結果的に全部、光子さんの言う通りになっている。

 光子さんとのやりとりを話したら、久弥さんどんな顔するかな?

 やっぱり光子さんには敵わないって苦笑する? それともこうして向き合うきっかけをくれたって感謝する?

 彼の反応を予想しながら、私はゆっくりと口を開いた。
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