だって、君は俺の妻だから～クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く～

　ベッドに横たわりながら、今日は朝から怒涛の一日だったと振り返る。久弥さんに離婚を切り出して、マンションを出て町原くんが実家を尋ねてきたと思ったら、そこに久弥さんが現れて……。

　ひんやりとしたシーツに体を丸めつつ、今の状況を確認する。

　私、これからも久弥さんのそばにいてもいいんだよね？

　期待と不安が入り混じって心なしか鼓動が速い。そのとき寝室のドアが開き、反射的に身を起こした。

「どうした？」

　寝支度を整え、不思議そうにこちらを見る久弥さんと目が合い、胸が高鳴る。

「あ、の……久弥さんを待っていました」

　言ってから、すぐにベッドに身を沈めた。

　意識しているのはおそらく私だけだ。久弥さんに変に思われないようにしないと。

「お、おやすみなさい」

　彼の背を向ける形で一方的に告げて目を閉じる。背中越しに久弥さんの気配を感じ、心臓の音が余計に大きく聞こえた。

「待っていてくれてありがとう、奥さん」

　不意に背後から抱きしめられ、久弥さんの逞しい腕が体に回される。彼の温もりに体温が一瞬で上昇した。

「あ、の」

「瑠衣がこうして俺の腕の中にいる現実に本当に感謝しているんだ」

　安堵めいた声が耳元で聞こえ、私は思いきって久弥さんの方に振り向いた。

「私、育った環境や過去は変えられませんけれど、久弥さんにとって少しでも相応しい奥さんになれるよう頑張りますから」

　彼と目を合わす余裕もなく、抱きついたまま宣言する。