だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「だから……これからもそばにいさせてください」

 これは彼に対してなのか、いわゆる神様に対して祈るような気持で言ったのかは、はっきりはしない。でも口にせずにはいられなかった。

「瑠衣」

 名前を呼ばれ、そろりと上目遣いに彼を見る。すると久弥さんから額をこつんと合わせられた。

「瑠衣の望みは全力で叶える。でもそれを願っているのは俺の方なんだ」

 熱のこもった眼差しに、瞬きひとつできない。おもむろに唇を重ねられるのを、目を閉じてごく自然に受け入れた。

 一度唇が離れ、どちらからともなくすぐに口づける。回された腕に力が込められ、求めるようなキスに溺れそうだ。

「んっ……んん」

 ねっとりとした舌の感触はまだ慣れず、思わず身をすくめそうになる。けれど嫌悪感はまったくなくて、逆に久弥さんへの想いがあふれて胸が苦しい。

「ふっ……ん、んん」

 涙腺が緩んで生理的な涙が滲み、ぎゅっと彼にしがみつくと、久弥さんは応えるように頭を撫でてくれた。

 好き……大好き。

 舌先を時折軽く吸われ、からめとられては淫靡な水音が脳に直接響く。唾液と吐息が混ざり合い、甘い口づけに溺れていった。

「瑠衣」

 唇が離れ、切羽詰まった声で名前を呼ばれる。色めいた久弥さんの表情は、男の人そのもので、対する私は息があがってすぐに声が出せない。

 ややあって彼の形のいい唇が動く。

「瑠衣のすべてが欲しいんだ」

 頬に手を添えられ、揺れない彼の瞳に捕まる。

「結婚したからとか、夫だからって理由だけじゃない。俺自身が瑠衣を愛しているんだ」

 涙がこぼれそうになるのをぐっとこらえる。
< 186 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop