だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「わ、たしも……久弥さんが好きです。久弥さんの全部が……欲しいです」

 たどたどしくも自分の希望を口にした。初めてかもしれない。こんなふうに誰かを求めたのは。

 いいんだよね? 望んでもかまわないんだ。

 唇を重ねられ、性急なキスが始まる。おとなしく身を委ねていたら、久弥さんの手がパジャマの裾から滑り込み、脇腹辺りを撫でた。

「ふっ……あっ」

 反射的に彼の手を押さえようとしたが、久弥さんは強引に私の肌に触れる。骨張った手の感触がありありと伝わり、体温が上昇しそうだ。

「やっ……あ」

 キスをしながら久弥さんは器用に私の肌を刺激していく。パジャマはたくし上げられ、あられもない格好になっているに違いないが、そこまで気が回らない。胸元に彼の手が伸び、背中が弓なりに仰け反る。

「んっ……やぁ」

 思わずキスを中断して声をあげた。肩を縮める私に対し、久弥さんは触れる手を止めない。巧みに刺激され、体の中からあふれ出しそうななにかに必死に耐える。

「嫌か?」

 耳元で尋ねられ、小さく首を横に振った。嫌だとは思わない。ただ、この追い詰められるような感じが怖いだけ。

 私の反応に久弥さんは微笑み、そっと唇を重ねた。

「可愛いな、瑠衣は。もっと瑠衣を気持ちよくしたい」

 目をぱちくりさせたら久弥さんは、私のパジャマのボタンに手をかけ、あっさりと脱がした。

「きゃあ!」

 間抜けな声を出てしまったが、久弥さんはまったく意に介さず、手際よく私の服を脱がすと、さっさと自分も脱いだ。

 逞しい体が薄明かりの中晒され、つい見惚れてしまう。久弥さんは短くなった私の髪に触れ、目が合った瞬間、私を強く抱きしめた。直に肌と肌が重なって、厚い胸板越しに伝わる体温はこのうえなく心地いい。
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