だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「すみません、私行かないと」
電話を切り、震える声で告げた。
「どこの病院だ? 国立?」
今度こそ踵を返そうとする私の腕を再び久弥さんが取る。引き留めるというより支えるような触れ方だった。動揺もあってつい答える。
「い、いえ。医療センターらしく」
「わかった。行こう」
素早い返事があり、今度は強引に私の肩を抱くと彼は駐車場に足を向ける。
つい従いそうになったが、久弥さんを巻き込むわけにはいかない。忙しいと聞いたばかりだし、私との関係だってそこまでのものではない。
「大丈夫です、私ひとりで」
「いいから。こういうときに強がるな」
ぴしゃりとはねのける言い方なのに、やけに力強くて胸に響く。これ以上は拒否できず、素直に彼を頼らせてもらうことにした。
来たときと同様に助手席に乗り込み、行きとは違う道を車は進み出す。
心臓が痛いくらい強く打ちつけ、頭の中でさまざまな考えが湧いては消えてを繰り返していく。それを無理やり振り払い、流れ出す景色を目に移しながら私は口を開いた。
「母は昔から体が弱くて……それなのに私を産むって決めて、私を産んでからさらに体調が悪化したみたいなんです」
聞かれてもいないのに一方的にしゃべりだす。なにか話していないと不安で押し潰されそうだった。
隣にいる久弥さんは聞いているのか、聞いていないのか。なにも言ってこないのが逆にありがたく、そのまま話し続ける。
電話を切り、震える声で告げた。
「どこの病院だ? 国立?」
今度こそ踵を返そうとする私の腕を再び久弥さんが取る。引き留めるというより支えるような触れ方だった。動揺もあってつい答える。
「い、いえ。医療センターらしく」
「わかった。行こう」
素早い返事があり、今度は強引に私の肩を抱くと彼は駐車場に足を向ける。
つい従いそうになったが、久弥さんを巻き込むわけにはいかない。忙しいと聞いたばかりだし、私との関係だってそこまでのものではない。
「大丈夫です、私ひとりで」
「いいから。こういうときに強がるな」
ぴしゃりとはねのける言い方なのに、やけに力強くて胸に響く。これ以上は拒否できず、素直に彼を頼らせてもらうことにした。
来たときと同様に助手席に乗り込み、行きとは違う道を車は進み出す。
心臓が痛いくらい強く打ちつけ、頭の中でさまざまな考えが湧いては消えてを繰り返していく。それを無理やり振り払い、流れ出す景色を目に移しながら私は口を開いた。
「母は昔から体が弱くて……それなのに私を産むって決めて、私を産んでからさらに体調が悪化したみたいなんです」
聞かれてもいないのに一方的にしゃべりだす。なにか話していないと不安で押し潰されそうだった。
隣にいる久弥さんは聞いているのか、聞いていないのか。なにも言ってこないのが逆にありがたく、そのまま話し続ける。