だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
第二章 期間限定の契約結婚は明確に
 久弥さんは宣言通り、忙しい合間を縫って、私とともに母に会いに行ってくれた。改めて結婚するという報告と、今後の治療について話し合うために。

 知り合いのいいお医者さまがいるからと話を通してくれ、手術を前提とした母の転院の手続きなども着々と進めていく。恐縮して何度も頭を下げる母に「これくらいなんでもありませんよ」と久弥さんは笑顔で返していた。

「結婚相手である瑠衣さんのお母さんなんですから」

 これが赤の他人ならきっとまかり通らないのに、〝結婚〟という言葉は思った以上に強い結びつきなんだと実感する。

「いい人に出会えてよかったわね」と私に幸せそうな顔を向けてくる母に、嘘をついていると申し訳なく思う反面、手術ができるのは本当にありがたい。

 久弥さんには感謝するばかりだ。そして、ここまでしてもらったからには、私もきちんと彼の期待に応えなくてはと決意する。

 十二月に入りあちこちでクリスマスソングが聞こえだし、街行く人々の上着がどんどん分厚くなる季節、年末に向けて賑やかな雰囲気に包まれている。

 ほんの一か月前にはこんな状況になるなんて夢にも思っていなかったから、なんだか不思議だ。土曜日、今日はいよいよ光子さんに結婚の報告をする段取りになっている。

 久弥さんに車で迎えに来てもらい、すっかり覚えた道順で病院へ向かう。さっきから異様に脈が速い。自分の母親に報告するよりも光子さんに伝える方が緊張する。
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