だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 一生はめるわけではないし、普段からつけたままにしなくても、光子さんに会いに行くときにしておけば問題ないだろう。

『ありがとうございます。別れるときにちゃんとお返ししますね』

 返されたところで久弥さんも困るだろうけれど。案の定、『その必要はない』と返事があった。

 婚姻届は一月一日に届け出た。これは光子さんに倣ったのだ。彼女も入籍を元日にしたそうで、当時TOGAコーポレーションの跡継ぎとして忙しくなるのを予想していた久則氏は結婚記念日くらいは一緒に過ごせるようにと、元日を選んだらしい。

 話を聞いたとき、すごく素敵だと思った。久則氏は本当に光子さんを愛していたんだな。

 私たちが同じ日に入籍すると知った光子さんは、嬉しそうにしながらも『元日だけとは言わず、どんなに仕事が忙しくても夫婦で過ごす時間を作らないとだめよ』と久弥さんに念押ししていた。

 光子さんは調子が悪くて面会できない日もある。それでも会ったら嬉しそうに笑顔になる彼女に、余計な心配をかけないよう努めるしかない。

 孫の結婚相手となったら、私ひとりで今まで以上に光子さんのところに頻繁に顔を出しても不自然ではないだろう。母は手術に向けて体調を整える日々を送っていて、こちらにも足繁く通う。忙しいが、私自身が望んだ結果だ。

 そして緊張と不安を抱えて始まった久弥さんとの結婚生活は、想像以上に味気ないものだった。
< 46 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop