だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
カップや食器を片づけて戻ると、彼の姿はダイニングにはなかった。
「瑠衣」
名前を呼ばれて振り向いたら、久弥さんはリビングのソファに腰を下ろしている。
「はい」
返事をしたら手招きされ、おもむろに彼に近づいていく。目の前まで歩み寄ると、久弥さんは私の腕をそっと掴んだ。
「どうされました?」
「瑠衣の言う通り、夫としての特権を享受しようと思って」
彼の言葉に虚を衝かれている隙に、久弥さんは私の腕を引き、拒否する間もなく私は彼の膝の上に横抱きに乗せられていた。
「なっ」
ここにきて抵抗を試みたが腰に腕を回され、離れられない。
「妻に触れられるのは夫だけの特権じゃないのか?」
「そういう意味で言ったわけじゃ……」
心臓が急にうるさくなり、体温が上昇する。ぎゅっと唇を引き結ぶと沈黙が降りて、彼の脈拍や息遣いまで感じられる。
それなら、逆もしかりで私のものも伝わっているのでは?
「俺に触れられるのは嫌ではなかったんじゃないか?」
いつかの私の言い方を借りて久弥さんは尋ねてきた。それに対し、極力平静を装って答える。
「平気、だとは言ってません」
「なら慣れるしかないな」
抱きしめる力が強められ、私の体はますます硬直した。けれど不思議と嫌悪感は湧かない。頭を撫でられ、次第にこの状態に慣れてきたのもあり、力を抜いて思いきって素直に彼に身を委ねてみる。
こんなふうにされるのは、子どものとき以来かもしれない。思い出せないくらい、遠い昔――。
「瑠衣はどんな子どもだったんだ?」
心の中を読まれたのかのようなタイミングで問いかけられる。
「瑠衣」
名前を呼ばれて振り向いたら、久弥さんはリビングのソファに腰を下ろしている。
「はい」
返事をしたら手招きされ、おもむろに彼に近づいていく。目の前まで歩み寄ると、久弥さんは私の腕をそっと掴んだ。
「どうされました?」
「瑠衣の言う通り、夫としての特権を享受しようと思って」
彼の言葉に虚を衝かれている隙に、久弥さんは私の腕を引き、拒否する間もなく私は彼の膝の上に横抱きに乗せられていた。
「なっ」
ここにきて抵抗を試みたが腰に腕を回され、離れられない。
「妻に触れられるのは夫だけの特権じゃないのか?」
「そういう意味で言ったわけじゃ……」
心臓が急にうるさくなり、体温が上昇する。ぎゅっと唇を引き結ぶと沈黙が降りて、彼の脈拍や息遣いまで感じられる。
それなら、逆もしかりで私のものも伝わっているのでは?
「俺に触れられるのは嫌ではなかったんじゃないか?」
いつかの私の言い方を借りて久弥さんは尋ねてきた。それに対し、極力平静を装って答える。
「平気、だとは言ってません」
「なら慣れるしかないな」
抱きしめる力が強められ、私の体はますます硬直した。けれど不思議と嫌悪感は湧かない。頭を撫でられ、次第にこの状態に慣れてきたのもあり、力を抜いて思いきって素直に彼に身を委ねてみる。
こんなふうにされるのは、子どものとき以来かもしれない。思い出せないくらい、遠い昔――。
「瑠衣はどんな子どもだったんだ?」
心の中を読まれたのかのようなタイミングで問いかけられる。