だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
第四章 会いたい気持ちは本物に
 月末の平日に母の手術の日は決まり、その日は有給をとって一日母に付き添うことにした。

 久弥さんは仕事だが、ずっと気にかけていてくれた。そもそも母が転院して、腕が確かな先生のもとで手術できるのは、すべて久弥さんのおかげだ。

 明言しなかったが、病室もグレードの高い個室にしてもらっているのは久弥さんの口添えがあったからなのだろう。感謝してもしきれないと思う一方で、つくづく久弥さんや光子さんは住む世界が違うのだと感じた。

 母の病院は気軽に足を運べる場所にはないが、それでも週末に光子さんのところに顔を出した際は、久弥さんは母の病院にも一緒に見舞ってくれた。

 手術には六時間以上に及ぶと事前に説明があったので、私も気合いを入れて臨む。手術の間、なにかができるわけでもないけれどそばにいない選択肢はない。

「瑠衣、忙しいところごめんね」

「そんなこといいの。お母さん、大丈夫だからね。先生を信じて。きっとよくなるから」

 朝から病室に顔を出し、手術前の母にエールを送る。いつも明るい母だが、今日はいささか緊張しているのが伝わってくる。私が不安そうな顔をするわけにはいかない。

 慌ただしく看護師さんが行ったり来たりする中、手術の説明や同意書の記入などに対応しながら、手術室に向かう母を見送る。

 難しい手術とはいえ、ここの病院の設備と先生の評判ならきっと心配はいらない。わかってはいても、他になにかする余裕はなかった。
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