だって、君は俺の妻だから～クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く～
第五章　初デートで縮まる距離は確実に
　母の術後経過は良好で、手術翌日には意識が回復し会話もできるようになった。それからＩＣＵで五日ほど過ごした後、一般病棟へ移る。専門のリハビリ士たちが母の状況を見極めながらリハビリメニューを組み立て実践していくので、入院生活はまだしばらく続くそうだ。

　まだ痛みや行動制限も多い中、母は意欲的にリハビリや治療に取り組もうとしている。

「瑠衣と久弥さんの結婚式に出られるように、早く回復しないとね。スタッフや子どもたちも待っているだろうし」

　仕事が好きな母らしく、気持ちが前に向いているのは純粋に嬉しい。一方で、結婚式は挙げられそうにないのが申し訳ない。光子さんの病気を理由にどこまで引っ張れるか。

　久弥さんも母のもとへ、一緒に顔を出してくれた。彼と別れたら母には心配をかけるだろう。納得する理由を用意しておかないと。

　二月に入り、冷たい風が寒さを通り越して肌に痛みを感じさせるほどになってきた。冬の寒さより夏の暑さの方が苦手ではあるけれど限度がある。寒いものは寒い。

　マフラーや手袋を身にまとい極力露出を抑えるが、建物の中に入ると一気にすべてを脱がなければならないので面倒だ。

「明日、予定がないならどこか出かけないか？」

　午後十時過ぎ、夕飯の準備をしているところに久弥さんから切り出され、目をぱちくりさせる。以前よりも帰宅時間は早くなったが、こうして遅くなるときもあった。今日は金曜日だからなのかもしれない。

　用意していたメニューは鶏肉ときのこの炊き込みご飯とすまし汁、かぼちゃコロッケとほうれん草のおひたしだ。
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