だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「ええ。最新作ではついに主人公の孫の代のお話ですよ」

「それはもう別物じゃないのか?」

 久弥さんの切り返しについ噴き出す。それからしばらく映画の話で盛り上がった。その中で久弥さんはチケットの予約も済ませ、彼と一緒に観るのは決定事項になる。

 久弥さんが食事を終え、自然と私も立ち上がった。洋食でも和食でも久弥さんは美味しそうにペロリと平らげてくれる。食べ方も綺麗で箸使いもうまく、見ていて気持ちがいい。最近片付けは彼がしてくれるので、そのまま任せることにした。

 寝支度を終えている私とは違い、久弥さんはこれからが貴重なプライベート時間だ。さっさと退散しようと、彼に声をかける。

「私、先に休みますね」

「わかった」

 寝室に向かおうとする私に久弥さんの視線が向けられた。

「いつも無理して起きておかなくていいんだぞ……好きに触っておく」

「それが困るんです!」

 つい声を荒らげて返してしまった。

 怖い夢を見て彼に迷惑をかけたあの日から、久弥さんのベッドにお邪魔する形で、私たちは同じベッドで寝ている。どうしてこうなってしまったのか。

 あのとき一緒に眠りについて、私は怖い夢を見ずに済み、彼は彼で空調が整ってはいるものの冷え切ったベッドに入るのを回避できた。そんなところだ。すべては冬のせい。

 お互い嫌ではなく、一応私たちは夫婦だし……。

 それに伴い恒例となった久弥さんとの触れ合いも、リビングからベッドへ移行となった。彼に抱きしめられると、安心してすぐに眠たくなってしまうのもあるのかもしれない。とはいえ体の関係どころか相変わらずキスひとつない。
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