だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 翌日、自室のクローゼットの中から、それらしい服をベッドの上に並べ、久しぶりになにを着るか迷う。

 ただ映画を観るだけなのに張り切りすぎだと引かれても困るが、わざわざ誘われて初めてふたりで出かけるのだから、多少のおしゃれはした方がいいよね。

 悩み抜いた結果、白のリブニットに淡いピンク色のロングチュールスカートを組み合わせる。

 髪はどうしよう。サイドを編み込む? いっそのことまとめようか。

 鏡の前で睨めっこして自分の髪を手に取り、考える。

 誰かのために格好を考えてあれこれ悩むなんていつぶりだろう。でも嫌だとは思わない。久弥さんが少しでも気に入ってくれたら嬉しい。

「お待たせしました」

 リビングに顔を出したら、久弥さんはソファで本を読んでいるところだった。見惚れていたら、彼の視線がこちらに向き心臓が跳ねる。

 久弥さんはグレーのニットセーターに黒のテーパードパンツというシンプルな組み合わせだが、相変わらずスタイルもよくて絵になる。

 本を閉じて立ち上がると、彼はゆっくりと私の方に近づいてきた。

「待っていない。疲れは残っていないか?」

 彼の質問に私は唇を尖らせた。

「それはこっちのセリフです。私、久弥さんがベッドに来たの、知りませんでした」

 私より忙しい彼の方が、睡眠時間が短いのはどうなんだろう。もしかして……。

「やっぱり私が一緒だと」

 言いかけて頭の上に手がのせられる。
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