契約彼氏とロボット彼女
300万円
もし、いま懐に300万円あったら……。
滞納している家賃返済。
家族への仕送り。
久々に牛肉が食える。
新しい服が買える。
それと……それと……。
やべぇ。
生まれてこのかた貧乏すぎて贅沢の仕方がわからない。
いいや、俺しっかりしろ!
目の前に積み上げられた大金に心が揺らぐんじゃない!
昔から裕福な暮らしには無縁だけど、苦労を知らぬまま贅沢を考えちゃいけない。
理性を取り戻して意思が固まった颯斗は、首を横に振って現金からそっぽを向いて腕を組んだ。
「いや、金額の問題じゃない。あんたは金持ちかもしれないけど、何でもかんでも金で解決出来るわけじゃない。それに、あんたはどうして俺をターゲットに? 俺はあんたを知らないのに」
「……それは」
「俺はモテるタイプじゃないし遊びで女と付き合う時間はない。生活苦でアルバイトを掛け持ちしなきゃ生活が成り立たないくらい、生活するのにいっぱいいっぱいなんだよ」
「確かにおっしゃる通り。あなたの顔は中の上で特にイケメンと言うわけではないのですが……」
彼女は俺に恋してるとか言いながらも、空気を読まずに毒を吐く。
そのお陰で心の曇り空が一気に晴れ間を見せた。