契約彼氏とロボット彼女
家を訪ねてきた彼女
ドンドンドンドン……
沙耶香は先程の中年女性と同じように、拳に痛みを感じるくらい少し強めに扉を叩いた。
すると、叩いてから5秒もしないうちに扉が開かれる。
ガチャ……
「……だから、家賃なら次の給料日に払いますって」
颯斗は薄暗い部屋から反抗的な口調で部屋から出てくると……。
目の前には、昨日大金を持ってアルバイト先のコンビニに現れた沙耶香達三人組が玄関の外に立ち並んでいた。
再び部屋に来たのが大家だと思い込んでいたせいか、スーツ姿の沙耶香達を見るなり目を疑う。
「あっ、あんた達。昨日の……」
「あの……。いきなり家を訪ねて来てごめんなさい」
「はぁ……。自宅まで調べたのかよ……」
「はい。実は先ほどのやりとりを一部始終見ていたのですが、颯斗さんはどうして家賃滞納をしているんですか? 先ほどの方の反応を楽しんでいるのでしょうか」
「……は? そんな趣味ねぇし。それより、こんなところまで何しに来たの? 昨日も言ったけど、契約ならゴメンだよ。見ての通り、あんた達と遊んでる暇じゃない。あんたは庶民の暮らしってもんを知らなすぎるだろ。もう帰ってくれよ」
気持ちが萎縮気味な颯斗が三人を追い払うように扉を閉めようとすると……。
右京は扉が閉まる直前にサッと足を挟んだ。
右京「うぬぬぬっ……うぐぐっ(まだ話は終わってないのに、勝手に扉を閉めるな)」
颯斗「ちょっと! あんた、いきなり扉に足を挟むなんて危ないだろ」
サングラスの奥から睨みつける右京に颯斗は目をひん剥く。
「颯斗さん、お困り事があるなら任せて下さい。すぐに解決をしてあげます。今からこのアパート一棟を買い取りますから」
「は? 家賃滞納如きでアパートを買い取るのはオカシイだろ。いいか、俺にどんな事があっても余計な事をするな。お願いだから俺の人生に首を突っ込まないでくれよ」
颯斗は再び持ち金で解決しようとしている無謀な言動に呆れて髪をくしゃくしゃと掻きむしる。
しかし、沙耶香も心を決めてきたからこそ一歩も引こうとしない。