契約彼氏とロボット彼女
黄金色の日差し
場所は黒崎家の父親の書斎。
古びた木製デスクに背中を向けている沙耶香の父親は、窓の外を眺めながら付近で待機している執事に背中越しに聞いた。
「そうか、まだ見つからないのか……」
「申し訳ございません。情報に限りがございまして、これ以上の捜索が可能かどうか」
「こんなに長い歳月をかけてもなかなか見つからないものだな」
「旦那様……」
「いや、まだ諦めていない。金ならいくらでも積む。だから、引き続き捜索を頼む」
「はい、かしこまりました」
執事は頭を下げてから部屋を出ると、父親は窓から差し込む黄金色の日差しを浴びながら呟いた。
「あの日さえ訪れなければ、心に負債を背負う事はなかったのに」
父親は長年経っても忘れられない過去を振り返りながら、左手で縦五センチに伸びている首の傷跡を軽く撫でた。