契約彼氏とロボット彼女
充電
深夜、居酒屋バイトから帰宅してサヤを起こさぬように玄関の照明だけを点けた。
就寝支度を終えてから、サヤの額のタオルを取って氷水で冷やし直してから再び当てる。
照明を落としてから夏掛け一枚の布団に入ると隣からモワッと熱が伝わる。
体温計を持っていないから正確な体温が測れない。
だから、頬に手を当てて熱を確認した。
すると……。
「颯斗さん」
サヤはうっすらと目を開けて僅かに聞こえるくらいの小さな声で名前を呼んだ。
「起きてたの?」
「はい。……今からお願い事を言ってもいいですか」
「うん、いいよ」
「手を握っててくれませんか」
カーテンの隙間から溢れている月明かりが寂しそうな瞳を映し出している。
見目麗しい彼女に自然と心が吸い寄せられてしまう。
「えっ」
「充電したいんです。一日でも早く元気になる為に」
俺は彼女の希望通り、布団から出ている手を握りしめた。
熱を帯びている小さな手は僅かに震えている。
俺に何かを訴えている訳じゃなさそうだけど、今はそういう気分なんだと思ってぎゅっと握った。