契約彼氏とロボット彼女
第九章
部屋に置かれた段ボール
ーー翌朝。
俺は普段通り朝食を済ませてから、コンビニバイトに行くフリをして家を8時40分に出た。
何故この時間に家を出たかと言うと、彼女に怪しまれないように予約していた指輪を受け取りに行くから。
ジュエリーショップの開店時刻は10時。
店までの距離は家から30分ほど。
開店まで時間がたっぷりあるので、付近のコンビニで時間をつぶしていた。
9時55分には店の前に到着してオープンと共に店内へ。
早速店員に予約票を渡すと、名前と日付が刻印された指輪がベロア素材のトレーの上に置かれた。
「サイズと刻印をご確認していただいてもよろしいですか?」
「あっ、はい。えぇっと……、サイズは大丈夫。名前はサヤで日付は今日。合ってます」
「では、お会計はこちらでお願いします」
指輪が無事に手元に届いた瞬間、ホッとした。
この指輪は数時間後には彼女の指へ…。
こんな安っぽい指輪じゃ満足しないかもしれないけど、プレゼントというのは金額じゃなくて気持ちだと思っている。
ジュエリーショップで会計を済ませて指輪ケースを鞄に入れてから、付近のスーパーへ。
買い物カゴには普段滅多に買わない牛豚ミンチを入れた。
夕飯のメニューはハンバーグ。
あと、赤ワインとケーキも買おう。
買い物が次々終える度に気分は上々。
エコバッグの中は珍しく食材でいっぱいに。
スマホで時間を確認すると、12時半を過ぎていた。
「やっべ! 早く帰らなきゃ。今日は大切な記念日になるのに、のんびりしてる場合じゃなかった」
颯斗は30分かけて帰宅してからインターフォンを押した。
ピンポーン……
だが、反応はない。
沙耶香は出掛けたのかなと思いつつ、鍵を開けて中に入る。
すると、リビングのちゃぶ台の隣には大きな細長い段ボールが置いてあった。
部屋に上がって台所に荷物を置いてからリビングに行くと、その段ボールの正体が判明する。
「え! テレビ? ……どうして新しいテレビがここに?」
颯斗は不審に思ってダンボールに指先を置くと、隣のちゃぶ台の上には一通のピンクの封筒が置かれていた。
早速封筒を手に取って中を開くと、手紙は沙耶香から宛てられたものと知り、二枚に折り重ねられている手紙を開いて目を通し始めた。