君とふたりで。
1章 新しい季節
友達
「皆さん、ご入学おめでとうございます」
──透き通るような青い空。
まだ冷たい風が頬を撫でる。
今日から新しい生活が始まる。
見慣れない生徒達に、先生方。
目に映る全てが、あたしを新鮮な気持ちにさせた。
市川 咲良(さくら)15歳。
真新しい制服に袖を通し、中学よりも短いチェックのスカート。
ネクタイを緩めに結ぶ。
“受験”という難関をクリアし、今日から憧れの高校生。
…と言っても、あまり大きな変化はない。
黒いショートの髪に、すっぴんの顔。
可愛いわけじゃないし、特別スタイルがいいわけでもない。
かといって太ってはいない…と思う。
何もかもにおいて中途半端なあたし。
だけど、人見知りの激しさだけは誰にも負けない…っていう、意味の分からない自信がある。
全然誇れることじゃないんだけど、あたしは人と話すのが苦手で。
おとなしいわけでもないのに、周りからは“静かな子”だと思われていた。
肌が白いのもあり、なんとなく、そんなイメージが出来上がっていたのかもしれない。