君とふたりで。



だけど…
ハルは傘を開くと、あたしの頭上にかざした。


行動が理解出来ず戸惑うあたしに、




「あれ? 一緒に使おうって意味じゃねぇの?」




と言った。



だから、親を呼ぼうとまさに携帯を取り出そうとしていたあたしは、「え?」と間抜けな声を出してしまった。




「あ…」



“親呼ぶから大丈夫”と続けようとしたが、口をつぐんだ。



せっかく送ってくれるって言ったハルの厚意を無駄にしたくない。


…というのは建前で。


あたしはこの時きっと、一緒に帰りたい、と思っていた。


自分でもその感情には気づいていなかったけど。




「いいの…?」


「おう」




なんだか無性に嬉しさが込み上げてきて、無意識にニンマリと笑ってしまった。


濡れないように鞄を胸の前で抱き抱え、「お願いします」と一言。


ハルは何も言わず隣に並んで歩きだした。



強めに降る雨が容赦なく打ちつける。


まだ終わらない梅雨のせいか、じめじめしていた。



何か喋った方がいいのかな…と心では思うものの、考えれば考えるほど言葉が出てこない。




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