君とふたりで。



そもそも喋ることが得意でないあたしが、この人と。


口数の少ないハルと会話のキャッチボール、というのが無理な話だ。


学年が違ううえに学校にあまり来ないハルと、一体どんな共通点があるというんだ。


必死で頭をフル回転させるあたしとは裏腹に、全く落ち着き払っているハル。


…もしかしたら、余計なことをペラペラ喋るよりおとなしくしていた方が良いのかもしれない。



色々考えても、結局話題は見つからず、口を開くことが出来なかった。



隣にいるのがハルだということと。

隙間がないほど近い距離に、緊張していたせい…だったのかもしれない。


Yシャツごしの体温に、鼓動が速くなるのが分かる。


…今日が雨で良かった。


じゃなきゃ、この音が聞こえてしまうから。



家に着くまでの10分くらいの間。


いくつか言葉を交わしたけど、正直どんなことを話したか覚えていない。




「送ってくれてありがとう…ございました」




やっぱり無表情のまま返事をするハル。


あたしはその整い過ぎた綺麗な顔から、肩へ視線を落とした。



…右肩、ずぶ濡れだよ?




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