君とふたりで。
さっきの声とは違い、ドスがきいている。
それだけで不良は何かを感じ取ったのだろう…。
チッと小さく舌打ちして、逃げるように早足で通り過ぎていった。
「大丈夫?」
ハッと我に返ると、あたしを庇ってくれた男の人がこちら側に向き直り、声を掛けてきた。
「あ…あの…すいません」
まだ混乱していたのもあり、顔を上げることが出来なかった。
「ここらへん、あーゆう奴出るから気ィ付けてな」
「あ…はい、ありがとうございましたっ」
あたしは優しい言葉にドキドキしながらお礼を言い、その場をあとにした。
あの時の感情は今でも残っている──。