君とふたりで。
この選択があたしのこれからを左右するなんて、知る由もなく。
イヤホンを耳にはめ、音楽を聴きながら歩いていた。
みんなが今話題にしているような曲ではなく、少し前に流行ったのとか、好きなアーティストの曲とか。
…流行に敏感ではないから。
しばらく歩いていると、大きなマンションが見えてきた。
その隣にある駐車場。
そこで事件は起きた。
ちょうどあたしの好きなアーティストの失恋ソングが終わり、次の曲になるまでの、短い時間。
「ギャハハッ! マジウケる!!」
そんな短い間に聞こえてきた、男の豪快な笑い声。
あたしは何も考えず声のした方を見る。
マンションの隣の、わりと大きな駐車場。
中には自転車やバイクを止める駐輪場があり、数台のバイクがある。
そのほとんどは改造されているようだった。
目に入ったのは、広い駐車場を占領するように、ど真ん中に腰を据えた男達の姿。
人数を把握するのにそう時間は掛からなかった。
4人くらいしかいなかったから。