君とふたりで。
ギャップに混乱して曖昧に頷く。
「名前なんてーの?」
「あ、えと…市川 咲良、です」
「さくらか! 可愛いな♪」
名前が可愛いってことなんだろうとは思ったけど、言われ慣れていないあたしは恥ずかしくなった。
「おい裕矢ぁ〜! いじめてんじゃねぇよ!」
「うっせぇ!」
ゆうや…?
どっかで聞いた名前。
「ま、絡まれたのが俺で良かったな! 今度から気ィ付けろよ?」
「え、あ、…はい」
「じゃあまたなっ」
“裕矢”と呼ばれたその人はニカッとあどけない笑顔を振りまくと、仲間のもとへ戻っていった。
かっこいいしモテるんだろうな…。
って、そんなことどうでもいいか。
ホッとしたあたしは一息つき、駐車場を横目で見てから歩きだした。
“裕矢さん”はこちらに向かってぶんぶん手を振っている。
あたしはそれに苦笑いして頭を下げた。
この出逢いが、のちにあたしを変えていくことになる──。