君とふたりで。
そぉっと自転車に近づき、慎重に鍵を回す。
─ガチャンッ
…っ!!!
鍵が勢いよく開き、例の集団の視線が一気に集まる。
金に近い茶髪をした男が、“裕矢さん”にアイコンタクトし顎をしゃくる。
辺りを見回して、人がいないことを確かめてから話しかけてきた。
「咲良じゃん」
なぜか小声。
人にバレたくないのだろうか。
「お前部活は?」
「あ…やってない…です」
「悪い子だねぇ」
軽い口調で言う。
あなた達もやってないんでしょ?
「また俺らみたいな奴に絡まれんなよー」
「はぁ…」
「今度ゆっくり話そーぜ」
ニッと口角を上げ、首を傾げる。
きっと女の子なら誰でもキュンとくるだろう、悪戯っ子みたいな笑顔。
そう言い残すと、仲間と一緒に爆音を響かせてどこかに消えていった。