君とふたりで。



あたしみたいな凡人と話しているのを見られたくないのかもしれないし、何か別の理由があるのかもしれない。



どちらにせよ、昼間接触したら後で面倒なことになりかねないから…
あたし的にはありがたかった。




「今帰りなら溜まってかね?」




歯を出してえくぼを作る裕矢くんの、突然の誘いに戸惑う。



なぜかあたしの脳裏には
“あの人”が映し出されていた。




「いや…今日は」




反射的に拒否の言葉が出てくる。顔が引きつるのが分かった。



ただ、「怖い」という感情があたしを支配する。




「え〜駄目なの…って、ハルじゃん!」




最後まで言わないうちに、あたしの恐怖の原因となる人物の名前が呼ばれた。



肩がビクッと震え、恐る恐る振り返る。



だるそうな、独特な歩き方で歩いてくる“ハルさん”。



この前見たスウェットとは違う、初めて見る制服姿。



開いたYシャツからのぞく胸元があまりにもセクシーで、目のやり場に困る。



でも…、




「登校すんの遅くないっすか!? 今起きたんかよ」




誰が見てもそう聞きたくなる。




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