君とふたりで。
何やらあっちはあっちで揉めているみたいだった。
喧嘩とかではなく、じゃれ合っているというか…。
「ショウ先輩、照れてんじゃね?」
あたしにはそう見えた。
「ほら、早く行けって!!」
ショウ先輩と一緒にいたお友達さんが、さっきのあたしと同じようなことを言ってこちらに来た。
「ちょ、やめろよ」
「あ…先輩、お疲れ様ですっ」
本番に強いチカ。躊躇いながらもそう口にする。
2人は一言二言言葉を交わすとあたしの方を見た。
「あっあたしは帰ります」
「俺もいなくなるから」
お友達さんはニコニコと2人を見送った。
…って、オイ。気まずいだろこの状況。
なんであたし、知らない人と2人っきりになってんの。
「ねぇ、家どこ?」
ラケットを肩に掛けた、テニス部らしいその先輩は、少し屈んで聞いてきた。
…あ、結構背高いんだ。
「あっ…えと。駅まで行きます」
本当はチャリで15分くらいで帰れる距離だけど。
この日はお母さんが駅に迎えに来ることになっていた。