君とふたりで。
めちゃくちゃ緊張して、何もないところで噛む。かなり恥ずかしい。
「咲良は部活やってないんだねー」
「はい…」
「入んないの? 一応全員やらなきゃなのに」
「え、そーなんですか!?
でも…もう2ヶ月経つし、今更じゃないですか?」
「んなことないっしょ」
一紀さんは駅舎にある古いベンチに深く腰掛け、じっとこっちを見ている。
…ってか。
近いから!!!
同じベンチに座っているあたし達の距離はゼロに等しい。
やっぱりこーゆうシチュエーションは苦手だ。
「………」
しばらく沈黙が続く。
ほとんど初対面だけど、
嫌われたくない
つまんないと思われたくない
という気持ちが働く。
でもその気持ちとは裏腹に、あたしの頭はなかなか機能してくれない。
…会話が、ない。
どうしたらいいのかと考えを巡らせていると。
右頬に何かが触れた。
「??」
──それは、一紀さんの人差し指だった。
「あの…」
「なぁに緊張してんの! 俺別に怖くないでしょー?」