君とふたりで。
「じゃあさー見つけたら捕まえといて!」
「え!?」
「いきなり声掛けてごめんね。俺ら探すからいいよ、じゃね!」
その人は爽やかな微笑みを向けると、ブツブツ文句を言う裕矢くんを連れてどこかに消えていった。
…何事??
呆気にとられる。
ただ分かることは、女の子に追いかけられていた人は、あの2人だったということ。
じゃあ、不良とは縁がなさそうな今の人が“片岡先輩”??
…なわけない。
あれは他校の生徒だったし、自分が知っている“片岡先輩”はあんな穏やかな人ではない。
あたしは1人で勝手に納得し、気を取り直して玄関を出た。
丁度その時。
誰かにグイッと腕を引っ張られた。
驚いて声が出ないのは本日2回目。
しかも驚いたのは腕を掴まれたことだけじゃなく。
「裕矢知らねぇ?」
聞いてきた人物が、“ハルさん”だったということ。
状況を理解するのに数秒時間を要した。
「…あ、え、えと…さっきいましたよ」
まだ15年間しか生きていないが、こんなに動揺したのは生まれて初めて…かもしれない。