君とふたりで。
声震えてた?
今はそんなこと冷静に考えられない。
鋭い瞳に真っ直ぐ捉えられ、身動きすら出来ずにいた。
綺麗で整った顔
…けど怖い。
たぶん、綺麗過ぎて怖い。
少し腕に温かさが伝わってきたところで、まだ掴まれていることに気が付いた。
とりあえず放して下さい
なんて、このあたしが言えるはずもなく。
ただ“ハルさん”の指にはめてある、ひんやりしたリングに目をやるだけ。
「どこいんの?」
機嫌の悪そうな言い方に肩がビクッと上下する。
「わ、分かんないです…けど、まだ学校の中にいると思います…」
「…ならいいわ」
“ハルさん”はようやく手を解放してくれた。
あたしにはもう用はないとでも言うように、スッと横を通り過ぎていった。
穏やかに吹いた風が、甘い香りを運んできた。
…それはきっと、彼の香水の匂い。
ポケットに手を入れだるそうに歩いていく後ろ姿を見送って、あたしは約束していた場所へと足を運んだ。