君とふたりで。
ヘルメットを取るなり笑顔で駆けてきたのは、もちろん裕矢くん。
“ハルさん”は相変わらずだるそうに歩いてきた。
靴が擦れる音が特徴的な歩き方で。
「あの…もしかして2人ですか?」
あたしは小声で智史さんに問い掛けた。
「そーだけど…なんで?」
「なんでもないです」
“ハルさんが苦手なんで”
…口が裂けても言えない。
「大体3人で集まることが多いからさ」
真っ直ぐ帰るべきだったかもしれない。
「あっ、智史ナンパか!?」
「お前と一緒にするなよ」
「んで? 咲良はかっこいい俺に会いに来たのか!!」
「それは違うけど」
「のれよそこは!!」
裕矢くんは豪快に笑いながらあたしの頭をクシャクシャ撫でた。
その様子を、興味なさそうに眺めている“ハルさん”。
あたし、やっぱりこの人苦手だ。
何を考えているのか分からなくて、逸らそうとしない青い瞳が怖い。
「ま、とりあえず座んな」
智史さんの言葉に、静かに腰を下ろす。
コンクリートがヒヤリと冷たい。