君とふたりで。
「ひ、人通り…?」
わけが分からず首を傾げるあたしに、
「カーチェイスしてぇなら、やってやるけど」
………。
ようやく分かった。
ヘルメットがないから、警察に見つかりでもしたらおしまいだぞ、ということに。
軽い冗談なんだろうけど、真顔なうえにこの人だから…
やりかねないと思った。
掴まれていた手がスッと放されたので、あたしは遠慮がちに腕を回した。
──ドキドキする。
硬く引き締まったお腹。
広い背中。
そこから伝わる体温。
ほんのり甘い──けど男らしい香り。
さっきまで怖いと思っていた人の印象が、少し変わった気がした。
嫌なドキドキではなく、胸の奥がキュウと締め付けられるような、温かい感じだった。
そのまま人気のない道に入り、あとちょっとで家、って所。
バイクはゆっくりとスピードを落とし、なぜかコンビニで止まった。
「わりぃけど降りて」
…ということは。あたしはこのまま徒歩で帰るのか。
「何してんだ。早く来いよ」