君とふたりで。



みんなそれなりの呼び方してるのに。




「何?」




反応してくれたのが、またあたしを嬉しくさせる。


でも、これはハッキリさせたい。




「あの…なんて呼べば良いですか?」




自分でも、いきなり過ぎる…と思った。




「あぁ…大体ハルって呼んでるから、それでいい」


「呼び捨てで良いんですか? 字は季節の“春”で…?」




そう聞くと、近くに転がっていた石をおもむろに拾い上げ、コンクリートの上に文字を刻んだ。




「…りょう、と?」




書かれたのは“遼斗”の2文字。




「“ハルト”」


「へぇ〜。…って、“ハルト”ってゆーんですか!?」




今の今まで本名すら知らなかった自分に驚く。


─片岡 遼斗─…。



そういえば、中学の時は無関係な世界の人だったから。


名前はよく覚えていなかった。




「じゃあハル、で…。あ、あたし咲良です」




軽く自己紹介すると「分かった」と一言。


今まで知らなかったとも受け取れる答えだったけど、それだけで良かった。




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