君とふたりで。
裕矢くんが言うには、
「ハルは人の名前なんか滅多に覚えない」
らしいから。
それからハルとは色々な話をした。
…って言っても、口数が少ないから、こっちが喋りかけないと駄目なんだけど。
なぜかこの年にして耳が遠いあたし。
何回も「え?」なんて聞き返すもんだから、さぞ不快に思ったに違いない。
そのおかげと言うのか…
空いていた距離は少し縮まっていて。
ハルはあたしにイライラするわけでもなく、普通に接してくれた。
隣で煙草を吸う横顔を見つめる。
薄く剃られた眉。
形の良い薄めの唇。
切れ長の青い瞳。
鼻筋は通っていて、全てが整った、文句の付けようがない綺麗な横顔。
でも…
大事な“何か”が足りないような気がした。
“何か”とはなんなのか。
その思考は、こちらを向いたハルと視線がぶつかったことにより、プツリと途切れた。
また見惚れてしまった!!
物凄い速さで顔ごと逸らすあたし。
そして嫌悪した。
じっと見ていたくせに、目が合うと勢いよく顔を背ける。
感じの悪い行為を2度もしてしまった、と。