君とふたりで。



しばらく質問の意味を考え、ようやく分かった。


「綺麗」と言ったのに対する「何が?」だと。




「ハルが、ってことだったんだけど…」


「俺?」


「うん…」




理解出来ないとでも言うように、首を傾げるハル。



あたしが「綺麗」と言った意味が本当に分かっていないようだった。



もしかしたら、自分の容姿には全く興味がないのかもしれない。


そうでもなければ、こんな風に訊ねてくるはずがない。




「…褒められてんの?」


「も、もちろん!!」




デカい声で即答すると、ハルはフッと口元を緩めた。




「そりゃどーも」




適当な…というより、中身がない返事。



機嫌を取るための言葉じゃないけど。
普通、言われたら嬉しいんじゃないかと思う。



ハルは喜ぶ素振りも見せず、むしろ自分を嘲るような笑みを浮かべていた。



その表情はやけに冷たくて。



引っ掛かっていた“大事な何か”が、分かった気がした。


たぶん“感情”や“表情”だ。


でも、あたしにはなぜそれが「欠けている」のかまでは分からなかった。




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