兄妹はもうおしまい

1話

⚪︎乃愛の家(朝)

〈私の1日は、大好きな君の声で始まる
はずなのに〉

朝、乃愛(のあ)の部屋からは目覚まし時計の音が鳴り響く。
台所では春史(はるふみ)が朝食を作っている。
バタバタと大きな足跡を鳴らし、勢いよく居間に入った乃愛は、涙目になりながら、大きな声で言う。

乃愛「ちょっと春くん!?」
  「なんで起こしてくれなかったの!」
春史「乃愛おはよう…何度も起こしたよ」


⚪︎乃愛の家・居間(朝)

乃愛「嘘だ!!」
  「あぁっ、今日は絶対早く起こしてって言ったのに〜!」

泣いているような声で愚痴を言う乃愛を、春史は呆れたような顔で見ている。

春史「あのなぁ、昨日入学しただろ、お前ももう高校生!」
  「いつまでもお兄ちゃんに甘えてちゃいけません!」

乃愛(そんな厳しいことを言う彼は、私が住んでいるマンションのお隣さんの春史くん。
お兄ちゃん、なんて威張ってるけど…)

春史の方を見て呟く。

乃愛「本当のお兄ちゃんじゃないくせに」

春史は少し難しい顔をして、口を開く。

春史「…なんか文句あるみたいだけど、初日から遅刻とか変な目立ち方するぞ」
乃愛「それが嫌だから起こしてって言ったんだよ!!」
春史「はいはい」

軽くかわされてしまった乃愛は少し怒りながら食卓につき、春史は机の上に自身が作った朝食を並べていく。

春史「早く食べよう。一緒に登校するんでしょ?」
乃愛「うん…」

乃愛(私たちは兄妹なんかじゃない。
けど、その関係にいつまでも縋ってしまう。
だってそうすれば、ずっと一緒にいられるから…)
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop