しののに愛を

私が歩いた道に花が咲くような綺麗な生き方は出来なかったけどさあ、いや、それどころか歩くことも怠けて苔が生えるくらいだったけどさあ、




海が空から降ってきているようだった。



深い色から透けてしまいそうな青まで揃った、限りの無い天井から、色の無い雨が降ってくる。ところどころ太陽からなる白光りが水滴と混じるから、余計にそう見えた。



だから切り出した話だった。今日が日照り雨で無かったら、口に出していない。



カギカッコを付けるべきか迷うほどの小さな声で、息を吐くように呟いた。



無意識に手を伸ばして、随分と冷えてしまったコップに触れる。



飲み物もちょっとした食べ物も、リモコンも、伸ばせば届く範囲に置いておくのだ。惰眠を貪る自分にはこれが最適で愛おしい生活だと満足している。



すっかり角の取れた氷が、今の雰囲気に似合わずカランと能天気な音を立てた。



「花を咲かせるにも枯らすにも、そうやって生き方が選べるなら、自分の消え方だって選びたいんだよ」



苦しいのも痛いのも嫌。例えば世界で一番の甘ったるいものを食べてこの世にさよならできるならそうしたいものだ。
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