しののに愛を

「でもやっぱり最後の最後でマオトコはやだから、ちゃんと名前で呼んでね」



取ってつけた呼び名云々はさておき、まさかの赤書きだった。昔からの神聖な物語をいとも簡単に変えてくるとは思わなかった。



点数にしたらマイナスの危機だ。今更振り返ってみると、テストでも百点なんて久しく見ていなかった。全て丸なんていうのは小学校とともに卒業したのだから。



これも今更だけれど、二人で話しているのに二人とも相槌もしないでいた。会話が成り立っていることが不思議で、少し経って薄ら笑いに変わる。



ジコチューなのか、優しさなのか。前者寄りの両方だろう。



誰だって自分が一番大事で、自分が一番可愛い。



それでもこの男は自分よりも私を上にしようとするから、マオトコなどと意味のわからないことを言い出す始末で。



「僕だって花が咲く生き方はしてない。わざわざ振り返って水やってないもの。
だから、なにもかもに恵まれた王子様になんて慣れっこないんだよね」



でも君が死ぬのが怖いっていうなら、マオトコくらいにはなれる。



痛みも辛さも泡に変えてあげる。



ほら、こっちのほうがロマンチックだろ。
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