きぼうのうさぎ

2020年4月

新しい環境というものには、期待と不安は付き物。新社会人として、新たな生活を始めようとしていた私は、クリーニングに出して丁寧にしまっておいたスーツに着替えた。姿見を前にして、そこに映る自分は、どこか大人びて見えた。

「さぁ、行こうか」

肩より少し長い髪を頭の後ろで結び、黒いカバンを手に持って、家を出た。
その時の私は人生で1番カッコよかったんじゃないだろうか。今まであった壮大な試練を乗り越えて、散々泣いて、何日もかけて気持ちを切り替えて、そんな弱かった自分を切り離すかのように、家の鍵をゆっくりとかけた。

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